CVCの仕事をうまく進めるには、会社の戦略(事業戦略)が明確であることが望ましいものです。会社が取り組むべき領域や、社内で対応する領域が明確になっていれば、それを踏まえてCVCが取り組むべき焦点を定めやすくなり、戦略的にも財務的にもいろいろなことを決めやすくなります。
では、会社の戦略は「誰が」作るべきものでしょうか。
昔話ですが、筆者はコンサルティング会社で大企業の戦略策定や業務改善のお手伝いをし、その後VC業界に転じてスタートアップ企業各社の成長戦略を見ながら仕事をしていたためか、「どんな会社も何らかの戦略が決まっているものだ」と考えていました。その後、メーカーに転職してCVCの運営に関わるようになってからも、「全社戦略とか事業戦略とかいうものが決まっているはずだ」とか、「自社の事業戦略を考える部署や担当者がどこかにいるはずだ」と勝手に想像していました。そうでないとこんなに大きな会社が長期に亘って繁栄を続けることはありえないではないかと。でも、社内のいろいろな方とお話をしてみても、なかなかそういう「部署」や「担当者」には出会わない。そういう部署や担当者はどこにいるのかと社内の方々に何度か質問してみたこともあるのですが、明確な答えはなく、どちらかと言えば「この人は何を言っているのだろうか、わかってないなぁ」というような反応だったように思います。そうした時期を経て、日系メーカーではトップダウンで事業戦略や新規事業戦略が決められることはあまりなく、多くの場合はボトムアップで提案されていくものではないか、という仮説を持つようになりました。実際、メーカーの新規事業の成功事例として取り上げられるものの多くはボトムアップが発端になっているように見えます。
そんなある日、いつものようにシリコンバレーで動き回りながらボトムアップで会社にいろいろと提案しようと躍起になっていたところ、日本から出張してこられた上の方からこう言われました。
「CVCは会社の新規事業戦略を考えてください」と。
これには「うーん、、、」と反応するのが精いっぱい。内心は「CVCはミクロな案件を探して提案するのは得意だけど、大掛かりなことを考えるのは荷が重すぎる、絶対無理」と思っていました。でも、改めて思い返してみると一理あるかも知れません。その時はたまたまシリコンバレーに住んでいたのですが、新しい技術や事業にどんどん触れられる環境にいると、世界の最先端と言われるものが全体的にどのような動きをしているか、その一面を垣間見ている気がしてきます。日頃は個別案件というミクロなレベルを一生懸命追いながら、それを包括的・体系的にまとめ上げたうえで自社と紐づけるようなストーリーを作ることができれば、それが戦略になるのではないかと。とはいえ、簡単な話ではないのも確かでしょう。よほど社内の英知を結集するか、有能そうな人を外部から連れてくるか、必死で頑張るか、どれも必要ですが十分ではないような気もします。
会社の戦略は、誰かが考えなければならない、でもそれは誰か専任の部署や人がやってくれるというようなものではなく、会社の上の人も下の人も、あらゆる層で、みんなで考えながらやっていく、日本の会社においてはそういうスタイルが受け入れられやすいのかも知れません。
CVCに携わる皆様は、日頃はミクロな話を追いかけていらっしゃると思いますし、それはそれで大変重要な仕事なわけですが、慣れてきたらそれを総括して大きなストーリーを作ることを目指しましょう。
もちろん、弊社ビズファクトリーもそうしたストーリー作りのお手伝いをします。

